密/室(仮店舗)

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■苦い菓物(くだもの) ―万愚節―■


前回の更新「甘い毒薬」の後日談兼エイプリルフールネタです。
出来ればそちらを先に読んでいただけると。


■苦い菓物(くだもの) ―万愚節―■


日曜日の昼下がり。
アントニオは所用から戻り、薄手のアーミーコートを脱ごうとしているところだった。

 なんだか緊張するな。

柄にもなく、鼓動を早めている己の心臓に多少の驚きを感じつつ、石動は心の中で一人ごちた。

 こういうのは勢いだ。考えすぎはよくない。
 ―――よし。

小さな箱を携えて、アントニオに歩み寄る。
気付いたアントニオが口を開く前に、その手にそれを押し付けた。
かわいらしくリボンがかけられたそれには焼き菓子が入っている。
「三週間近く遅くなったけど」

 ああ、こいういうのは苦手だ。

石動は自分の頬に赤みが増してくるのを自覚した。

 まともに顔も見れやしない。

「…大将、これ」
斜め上から、アントニオの声が降ってくる。
「チョコのお返しだよ…。こういうの、何か決まりがあるのかと思ってたんだけど」
「…決まり、って?」
「だから、返事がイエスなら何とか…」
「返事…」

 ああ、もう何だ、この変な間合いは…。

「…イエス、なんですか…?」

 そう言われて、思わず身体が震えた。
 本当はちゃんと顔を見て、目を見て言った方がいいに決まってる。
 だけど―――。

 実際にはさらに顔を伏せるようにして、一言搾り出すのが精一杯だった。

「うん」


「大将…」
アントニオが石動に向かって一歩距離を縮めようとしたその時、
石動は突然背中を丸めて身体をひくつかせた。

「大将?」
アントニオがそう言うと、それがまるでスイッチだったかのように石動は身体を折って笑い出した。
「ああ、ぼくはダメだ、こういうの!すぐ可笑しくなっちゃって…」
言いながら、可笑しくて堪らないのか目には涙まで滲ませて、
「いや、今日エイプリルフールだろ?だからって手の込んだ仕掛けを考えるほど酔狂じゃないけど、
昨日、洋菓子アルプスで賞味期限が間近だからって、コレくれたからさ」

そして一回ポンとアントニオの、小箱を支えた腕をたたき、
「おまえもノリがいいよなあ!芝居がかったこと結構上手いよな」




 我ながら気の利いた妙案だったと自負している。
 「ゼロの十倍返し」という条件もクリア、あいつがふざけて言った「告白への回答」もクリアし、
 エイプリルフールというイベントにも“参加”出来た。
 当日はアントニオもああやって小芝居を打ってくれたくらいだから、
 楽しんでくれたと思っていたのだが。

 ―――あれから三日。
 あれ以来ずっとアントニオの機嫌が悪い気がする。

                            END.



石動さんが酷いwww。

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