密/室(仮店舗)

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■万愚節■

■アン石SS■




■万愚節■


たれた目のせいかいつも微笑んでいるような顔の助手が、石動のデスクの前に立ち、いつものように微笑みながら言った。

「大将、長い間お世話になりました」

言われた石動は読んでいた新聞から顔を上げ一瞬きょとんとした後、思わず、といった態で小さく「え?」と聞き返した。

「携帯電話もお返しします。ああ、あのハンモックも…片付けないと」

アントニオは妙に清々しい顔で空中のハンモックを見上げ、それを片付けようとした。

慌てたせいで前のめりになりながらデスクから立ち上がった石動がその背中に手をのばし、くたびれたシャツを掴んだ。


アントニオが振り返ると、自分の肩の向こうに石動の顔が見えた。

眼鏡の向こうの黒い瞳が真っ直ぐにアントニオを見上げていた。

いつも血色のいい顔が青ざめて見えるのは、光線の加減だろうか。

それでもその唇は少し震えていて、やっと聞き取れるくらいの音量で「アントニオ」と言った。


「―――騙されました?」

そうはっきり言っても事態が飲み込めないようで、石動の手はアントニオのシャツを離そうとはせず、その目はアントニオの顔からそらされなかった。

「エイプリル・フールですよ、大将」

石動が不審そうに少しだけ眉をひそめ、もう一度「え?」と言った。

「エイプリル・フール」

そう言った後、彼を抱きしめたかった。戯れに仕掛けた一言が予想以上に彼を動揺させたことに罪悪感と―――歓喜を感じていた。

しかし、それは叶わなかった。

その単語の「エ」から「ル」までの間に石動の顔色は蒼白から真っ赤へと変化した。

ついでにその表情も常識では考えられないくらいに変化した。




あれから三日。
大将はまだ口をきいてくれない。


END.




完全に乗り遅れました…orz。>エイプリル・フール。
昨年「蒸し器」ぽんぷ様の素晴らしいエイプリル・フールっぷりを見せつけられてから、是非自分も、と、ネタ(上のじゃなく)は考えてたのにー。
そして今年も「蒸し器」様のエイプリル・フールっぷりは素晴らしかったですよ…!
どうやったら生まれるのあのセンス!(ムキー)(興奮)


ううう。
己の無能はさておき、顔面蒼白な大将を思い出してアントニオは幸せを噛み締めてたらいいと思います。
「万愚節」は“エイプリル・フールの漢語的表現”で、俳句では春の季語だそうです。
春泥さんに一句ひねっていただきたい…。



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| | 2010-04-11(Sun)22:35 [編集]


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