密/室(仮店舗)

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■それが答えだ!■

■アン石SS■

ヤマもオチもイミもエロもありません(笑)。




それが答えだ!


 どうしてアントニオはぼくなんかがいいんだろう?
 アントニオから見れば充分オッサンだし、金持ちでもないし(むしろ貧乏だ)、めちゃめちゃカッコいいわけでもないし。そりゃ「名探偵」ではあるけど、ぼくと違ってそれに感動するような感性を持ち合わせてもいないようだし、それに。
 男なのに。
 不思議だ。
 謎とは真相が隠蔽されている状態、不思議とは真相の上に虚偽の真相が覆いかぶさっている状態だと言ったのは京極夏彦だったかな。そう、黒衣の憑き物落としの有名な台詞だ。
「この世に不思議なことなど何もないのだよ」
 うん、まあ、多分、未だぼくの知らない「化学反応」「方程式」がアントニオの中にあるってことなんだろう。だからぼくには「不思議」なんだな。
 そんなふうに納得しつつハンモックからはみ出したアントニオの足を見上げると、その上半身がむっくりと起き上がった。いつものようにその顔には笑顔が浮かんでいる。
「そろそろ昼ご飯に行きませんか。昨日駅前でもらったチラシの店、行ってみるんでしょう?」
「今日開店だそうだからなあ。メニューも値段も手ごろだったし、味が良ければ通ってもいいよな」
いつの間にか床に着地していたアントニオがくすくすと笑いながら言った。
「オープン記念で、このチラシをもっていけば半額だから行くんでしょう?」

 その店は商店街から住宅街へ向けて路地を入っていかなければならなかった。小さな店が多い高田馬場であるが、そのあたりに自宅がある人しか通りかからないような場所だ。そりゃあ半額にでもして駅前でアピールしなければお客も入らないだろう。もらったチラシの地図を見ながら普段は通らない路地を歩く。
 何度か曲がったところにおそらく住宅一軒分だろう、ぽっかりと空き地が有り、伸び放題の雑草の隙間に猫が居た。何匹も。
「うわ、すごい数の野良猫だなあ。きっと誰かがここでエサをやってるんだね。集まってきてるんだ」
「結構すごい数ですね」
「こうして見ると同じ猫でも色んな顔してるのがいるなあ。みんな雑種なんだろうけど…。あの三毛は柄も綺麗だし、なかなか美人だな。あ、黒猫がいる。黒猫ってのもいいな」
「いや、あのコが一番可愛いです」
 きっぱりと言ってアントニオが指差したのは空き地の奥の暗がりに潜むように坐っている大きな灰色(多分本来の色は白だ)の猫だった。哲学的な顔といえば聞こえはいいが、つまるところ、世を憂うというより世に飽きたというか、何もかもつまらない、そういう顔をしていた。お世辞にも可愛いとは言えない。それに、野良のくせにどうしてそんなに太れるのかわからないくらい、でっぷりした体が重そうだ。
「ええ?本当か?一番ぶさいくだし太ってるしなんだか汚いぞ…。アントニオおまえ趣味が」
 石動は突然言葉を飲み込んだ。
「…大将?」
 そのまま昼食の間も、事務所への帰り道もむっつりと黙り込んでしまった。


「ねえ大将、どうして急に機嫌が悪くなっちゃったんです?」


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