密/室(仮店舗)

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■いつかのBirthday■

■アン石SS■

名探偵石動戯作さんお誕生日おめでとうございます!!

ということで記念SSをアップしてみました。
枯れ木も山の賑わいってヤツです。





■いつかのBirthday■


 小さなフォークが、石動の、塗装の剥げかけたデスクに乗った、やはり小さなケーキに落ちた。
「あ」
 落ちたというより突き刺さった。白く丸いケーキの中央にチョコレートソースで書かれた「Happy Birthday」のど真ん中に。
「馬鹿、おまえ、なんでよりによってど真ん中に…!」
 しっとりと滑らかなクリームに包まれた柔らかくふくらんだスポンジに深々と刺さった銀色のフォーク。見ようによってはなかなか猟奇的な眺めである。石動は反射的かつ尤もな非難をぶつけてくるが、アントニオは全く動じず、少し微笑んだままで答える。
「手が滑りました」
「手が滑ったって、おまえ…。あ」
 ケーキに刺さったフォークを注意深く引き抜きながら、さらにその不注意を非難しようとした石動だったが、何かを思い出したようだ。
「…どうしました?」
「思い出したぞ!おまえ、確か去年も同じようなことしただろう!ろうそくに火が点かないとか言ってて、マッチを…」
 その指摘ににんまりとアントニオは微笑みを深めた。
「そうでしたっけ?」
 対照的に石動は恨みがましい顔つきになる。
「…おまえ、本当はぼくの誕生日なんか祝う気ないんだろ」
「そんなことないですよ。そうでなきゃ少ないお駄賃を貯めてまでケーキなんか買いません」
 真剣な顔つきに変わり、きっぱりと言い切るアントニオを疑わしげに、あるいは“少ないお駄賃”という部分に反応してか不愉快そうに、見上げていた石動だったが、諦めたように軽いため息をつくと、
「まあ、いいや。食べられなくなったわけじゃないし。早く切って食べよう。…て去年も言ったぞ、ぼくは」
 その言葉にくすくすと笑い出したアントニオはいつものように
「はい」
 と答えた。


 いつまで一緒にいられるか、わからないから。
 忘れないで。
 毎年、貴方の誕生日に、ケーキをだいなしにする助手が、そばにいたことを。

 思い出して。

 誕生日に。
 誕生日には。

 思い出して。





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