密/室(仮店舗)

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■brander 2■

■アン石SS■





■brander 2■



 あと数日で十二月、という晩秋の朝。
 部屋の空気は冷え切っているが、ベッドの中はさっきまでそこに有った二人分の体温でぬくぬくと暖かい。
 シャワーを先に使いますかと問われて、後でいいと答えたら、わかりました、部屋とシャワールームを暖めておきますよ、と笑われた。寒いからまだベッドから出たくないとか、このぬくぬくの寝床をもう少し堪能したいとか(同じだ)、単にそう思っただけなのだが巡り巡って、結局はそういう要望を伝えたことになるのかな、と反省した。
 行儀よくただ眠っていたわけではないから、ベッドのシーツはしわくちゃだしなんだか毛布もおかしな方向を向いている。自分の髪も多分あっちこっちに跳ねているだろうな、と思いつつ、毛布の中にすっぽりと入り込むと、少し湿ったような温もりのある空間に昨晩の行為の残滓がありありと感じられるようで、すこしどぎまぎした。

「大将」
 呼びかけられて毛布から顔を出すと、寝巻き代わりのスウェットパンツだけを身に付けたアントニオがいつも通り声に笑いを含ませながら、
「ちょっと、見てもらえますか。どうなってます?」
 そう言ってくるりと背中を向けた。見ろ、と言われたのでベッドの横のダンボールに乗せておいたメガネをかけ、改めてその背中に目を向ける。
 風呂上りらしくしっとりと上気した背中に幾筋かのみみず腫れ。くっきりと浮き出した肩甲骨からわき腹にかけて、薄紅色のこんもりとした隆起が走っている。
 そういえばそんなことをした記憶がある、ような気がする。昨夜は妙に行為が濃厚で濃密で、ところどころ記憶が飛んでいた。
 どうなってますか、と問われたのだから、見たままを回答するべきなのはわかっていたが、ぼんやりとした記憶など無かったことにして、単純に「みみず腫れになっている」とだけ伝えるべきか、いさぎよく全てを認めて「ぼくの爪の跡がついている」と言うべきか、全てを認めた上で「昨夜、おまえがあんなふうにしたからだ」と責めるべきか、瞬間的に判断に迷った。どれを選択しても自分に不利な気がしたからだ。
 自分の記憶があやふやなのを言い訳にしようとしても、その薄紅色の隆起を刻み付けたのは自分であることは言い逃れ出来ない状況だし(演繹法だ)、それを認めた上で返答すれば、昨晩の行為で自分がそれをするほど乱れたのだということを告解させられるのに等しい。
 どう答えようと、昨晩の行為(の最中の自分)を反芻させられる羽目になる。
 言葉に詰まったままその背中を凝視していると、
「シャワー浴びてたらすごく沁みて」
 見返りながら言うアントニオは相変わらずにやにやと笑っている。
 再びの葛藤の後、結局自分の口から出たのは小さく、「ごめん」という一言だった。
 アントニオは妙に嬉しそうににっこりと笑った。

 充分に暖まったシャワールームを使い部屋に戻ると、下はいつものジーパンを履きかえているが、上半身にはシャツをひっかけただけのアントニオがベッドに座り、腕を器用に後ろに回して自分の背中を撫でていた。
「これ、消えるんですかねえ」
 熱心に背中を撫でながらそう言われて、罪悪感も無いではないが、「たかが引っ掻き傷じゃないか」とも思う。
「薬、塗ってやろうか?それくらいの傷なら跡も残らないと思うけど…」
 そう言うと、アントニオは何故か驚いたような顔をして、
「いや、出来たら一生残しておけないかと思って」
 と言った。
  


END.



brander」の石動さんバージョンということで。
またも某嶋さん(リンク参照)とこの拍手御礼SS(お礼が何種類も有るんだよ!皆連打するといい!)に触発されて書きました。“宿命”を果たすべく頑張ってみましたが、えっとなんていうのかな、玉砕?
orz
本当にいつも、すみません。(万感の思いをこめて)

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